RTKの精度「10mm+1ppm」はどういう意味? — カタログ値の読み方と、現場のばらつきが倍に見える理由


RTKの精度「10mm+1ppm」はどういう意味? — カタログ値の読み方と、現場のばらつきが倍に見える理由

RTKの精度「10mm+1ppm」はどういう意味? — カタログ値の読み方と、現場のばらつきが倍に見える理由

RTK受信機のカタログに並ぶ「水平 10mm+1ppm」は、固定の誤差10mmに、基線長1kmあたり1mmを足すという意味です。基準局から10km離れれば20mmになります。しかもこの値はRMS表記で、測った点の3分の2程度が収まる範囲にすぎません。現場のばらつきがカタログの倍に見えるのは、多くの場合この2点を読み違えているためです。


「10mm+1ppm」は足し算の式

ppm は parts per million、100万分の1です。基線長(基準局と移動局の距離)に対する比なので、1ppm = 基線長1kmあたり1mmと読み替えられます。

基準局と移動局、そのあいだの基線長

基線長 1ppm ぶん 「10mm+1ppm」の合計
1 km 1 mm 11 mm
5 km 5 mm 15 mm
10 km 10 mm 20 mm
20 km 20 mm 30 mm

固定部(10mm)はアンテナの位相中心や受信機の分解能など、距離によらず残る誤差です。比例部(1ppm)は、基準局と移動局で電離層・対流圏の通り方が変わるために消しきれない残差です。基線長が伸びるほど後者が効いてくる理由は、RTK基線長と測位精度の関係で仕組みを整理しています。

数値は機種によって異なります。多くの受信機では水平 ±(8〜10mm + 1ppm)、垂直 ±(15〜20mm + 1ppm) 前後が並びますが、必ず使用機のカタログの実数を見てください。本記事の表は「10mm+1ppm」「20mm+1ppm」を例として計算したものです。


水平と垂直で数字が違う

GNSSは衛星を「上から見る」配置になるため、上下方向は横方向より不利です。カタログでも水平と垂直は別行に分けて書かれ、垂直はおおむね水平の1.5〜2倍の値が入ります。

基線長 水平(10mm+1ppm) 垂直(20mm+1ppm)
1 km 11 mm 21 mm
10 km 20 mm 30 mm
20 km 30 mm 40 mm

高さの扱いは、そもそも「どの高さか」でも変わります。GNSSが直接出すのは楕円体高で、標高にするにはジオイド高を引く必要があります。この違いはRTKの楕円体高と標高にまとめました。


RMS は「全部がその範囲に入る」ではない

カタログ値にはたいてい RMS と添えられています。RMS はばらつきの代表値で、実務上は標準偏差(1σ)とほぼ同じものとして扱われます。つまり、

  • RMS の範囲に収まるのは、測った点のおよそ3分の2
  • 残りの3分の1はその外に出る
  • 「95%はこの中」と言いたいなら、おおむね2倍(水平なら2DRMS、垂直なら2σ)

という関係です。カタログの「1cm」を「必ず1cm以内」と読むと、現場の実感と合いません。

基線長10km の例 RMS(約68%) 95%で言うと(約2倍)
水平 20 mm 約 40 mm
垂直 30 mm 約 60 mm

カタログの「1cm級」は、10km離れた現場で95%基準に直すと約4cmということになります。許容差が95%や2σで書かれている規程と突き合わせるときは、ここを揃えないと判断を誤ります。


だから現場のばらつきは「倍に見える」

仕様どおりの受信機でも、現場で並べた測定値の幅がカタログの2〜3倍に見えることはよくあります。主な原因は次のとおりです。

見えるばらつき 実際に起きていること
同じ点を測り直すと数cm動く RMSの外側に出る3分の1を見ている(統計の性質そのもの)
建物際・法面際だけ暴れる マルチパス。カタログの前提はオープンスカイです(Fixが建物際で暴れる理由)
高さだけ合わない 垂直の仕様が別値であることに加え、アンテナ高の測り間違いが直接乗る(アンテナ高は何回測る?)
午後だけ荒れる 電離圏の擾乱。カタログ値は静穏時の条件です
Fix直後だけ外れる 初期化が浅い状態の解。数十秒〜数分の安定待ちが要ります

カタログ値はオープンスカイ・十分な衛星数・安定したFix解という良条件での数字です。現場条件がそこから離れるほど、実測の幅は仕様から離れます。


「精度」と「合っているか」は別の話

ここまでの話はすべてばらつき(精度)であって、偏り(確度)ではありません。基準局の座標が10cm間違っていれば、測点はきれいに揃ったまま全部10cmずれます。ばらつきが小さいことは、正しいことの証明になりません。

  • ばらつきが小さい = 何度測っても同じ値が出る
  • 偏りが無い = その値が真の位置と合っている

偏りを見つけられるのは既知点との比較だけです。作業前の確認手順は既知点による現場ヘルスチェックに、基準局の座標を間違えたときの影響は基準局の座標を間違えたらにまとめています。


許容差と突き合わせるときの順番

  1. 使用機のカタログから、水平・垂直それぞれの固定部とppmを読む(水平だけ見ない)
  2. 実際の基線長を入れて合計を出す(ネットワーク型RTKなら実質の基線長は短く保たれます)
  3. 規程側が何%基準かを確認する。95%・2σならカタログのRMSを2倍にしてから比べる
  4. 現場条件がカタログの前提から外れていないかを見る(上空視界・衛星数・Fixの安定)
  5. 既知点で偏りの有無を確認する。ここまで揃って初めて許容差と比較できる

公共測量では、測量の種別ごとに使用機の性能等級や較差の許容範囲が定められています。数値は測量の区分・要領によって異なるため、実施する測量に対応した最新の作業規程・要領を確認してください。


GeoDiveExaでの位置づけ

GeoDiveExa は、1点を複数回測って平均し外れ値を除く手順を備えています(複数回測定の平均+外れ値除去)。これはばらつきを平均で縮めるための仕組みであり、基準局の座標誤差のような偏りは平均では消えません。カタログ値の読み方と既知点チェックは、この平均処理とは別に必要な工程です。


まとめ

  • 「10mm+1ppm」は固定部と基線長比例部の足し算。1ppm=1kmあたり1mm
  • 垂直は水平のおよそ1.5〜2倍。カタログは行が分かれている
  • RMSは約3分の2が収まる範囲。95%で語るならおおむね2倍
  • 10kmの現場では、水平の95%は約4cm相当になる
  • カタログ値はオープンスカイ前提。条件が離れれば実測の幅は広がる
  • ばらつきが小さくても合っているとは限らない。偏りは既知点でしか分からない

出典

  • 国土地理院「公共測量におけるGNSS測量」等の作業規程・マニュアル類 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/
  • 国土地理院「電子基準点データ提供サービス」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/sokuchikijun40003.html

本記事で計算した値(いずれも本文の式をそのまま計算したもの)

値 根拠
1ppm = 1kmあたり1mm 1 km × 1×10⁻⁶ = 0.001 m
基線長10kmで水平20mm 10 mm + 10 km × 1 ppm = 10 + 10 mm
同・95%で約40mm RMS 20 mm × 2(2DRMS)
基線長20kmで垂直40mm 20 mm + 20 km × 1 ppm = 20 + 20 mm

次に確認する


開発者より: アプリ・Kindle本・公開プロジェクトの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


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