
昔の空中写真に座標はある? — 1928年からの8つの年代と、1枚のままでは地図に重ならない理由
写真1枚の状態では、座標は付いていません。 航空カメラの写真は中心投影なので、高いものほど、そして写真の縁に近いほど、像の位置がずれています。地理院地図で地図にぴったり重なって見える古い写真は、そのずれを数値標高モデルで取り除いたオルソ画像です。そして、そのずれを取り除く計算に使われているのが、現場のRTKと同じ仕組みで求めた位置情報です。
見られるのは8つの年代+現在
地理院地図の「年代別の写真」で選べる空中写真の年代は、次のように区切られています。
| 年代 | 内容 |
|---|---|
| 1928年頃 | 1928年頃に撮影された空中写真 |
| 1936年〜1942年頃 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 1945年〜1950年 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 1961年〜1969年 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 1974年〜1978年 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 1979年〜1983年 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 1984年〜1986年 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 1987年〜1990年 | 同期間に撮影された空中写真 |
| 年度別写真(2007年以降) | 電子国土基本図(オルソ画像)・森林の空中写真・地方公共団体等の空中写真・簡易空中写真・人工衛星画像を撮影年度ごとにまとめたもの |
このほかに全国最新写真(シームレス)、電子国土基本図(オルソ画像)(2007年〜)、航空レーザ測量の点検用等に撮られた簡易空中写真(2004年〜)、森林(国有林)の空中写真(2011年〜2015年に整備)、森林(民有林)の空中写真(2013年以降に整備)、東日本大震災後正射画像があります。
1990年から2004年までが、年代別の区切りとして空いています。 同じ場所の変化を10年刻みで追おうとすると、この期間だけは別の資料に当たる必要が出てきます。
表示の条件も押さえておくと現場で迷いません。年代を切り替えて重ねる時系列表示はズームレベル14以上、1枚ごとの写真の中心位置を示す「単写真」はズームレベル15〜18で表示されます。
1945年前後の写真は、米軍が撮ったものを含む
国土地理院は「これまでに撮影した国土の空中写真は、1930年代から現在に至るまでの全てを保管しています」とし、さらに「国土地理院が撮影したものに加えて、1945年前後に米軍が撮影したものを含め全ての空中写真は、『地図・空中写真閲覧サービス』で閲覧することができます」と説明しています。
つまり1945年〜1950年の年代帯は、撮影者が国土地理院ではない写真を含むということです。土地の履歴を調べるときに、この年代だけ画質や撮影条件の性格が違って見えるのは、そのためと考えられます。
もうひとつ、範囲の前提があります。国土地理院が撮影の対象としているのは「国土や地域の管理上重要な平野部及び離島」で、全国土の約半分の地域です。山間部で写真が見つからないのは、整備の遅れではなく対象外ということがあります。
1枚のままでは重ならない——中心投影のずれ
ここが本題です。航空カメラで撮った空中写真は、レンズの中心に光束が集まる中心投影です。レンズの中心から対象物までの距離の違いで、写真上の像に位置ずれが生じます。
ずれが大きくなる条件は2つ、はっきりしています。
- 写真に写る対象物が地面から高いほど大きい
- 写真の中心から周縁部に向かうほど大きい
結果として、高層ビルのような高い建物や、写真の縁にあるとがった山の像は、写真の中心から外側へ傾いているように写ります。真上から見た図ではないので、そのままGISに貼っても地図と重なりません。

オルソ画像は、この位置ずれをなくして、地図と同じく真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像へ変換(正射変換)したものです。だからGIS上で位置・面積・距離を測れるし、他の地理空間情報と重ねられます。
オルソ画像になるまでの4工程
「電子国土基本図(オルソ画像)」の作り方は4段階で説明されています。現場で座標を扱う人には、2段目と3段目が見覚えのある話になります。
(1)空中写真撮影。 雲や霧が写り込まないよう晴天の日に行い、操縦士はGNSSによる誘導で計画した撮影コース上を一直線に飛行します。隣り合う写真が重なるように撮るので、重複部分は立体的に見えます。
(2)標定点の設置。 オルソ画像に正確な水平位置と高さを与えるため、空中写真上で明瞭に確認できる箇所に標定点を設置します。方法は2つあります。
- 撮影前に地上の基準点にあらかじめ標識を設置し、空中写真上で確認する
- 撮影した空中写真上で明瞭に形が分かる場所——構造物の角、道路の縁石、マンホール、白線など——の水平位置と高さを、現地でGNSS測量機などにより計測する
2つ目の方法は、現場でやっていることそのままです。写真に写っているマンホールの蓋の中心を測る、という作業が、その写真の座標を決めています。
(3)同時調整と数値標高モデルの作成。 デジタルステレオ図化機などの画像処理装置に、各空中写真と、GNSS/IMU装置で計測した各写真の外部標定要素(撮影時の位置とカメラの傾き)、そして標定点の成果を取り込み、撮影区域全体で統合して調整計算を行います。そのうえで立体視による図化や自動標高抽出で各地点の標高を求め、隣り合う3点を結んだTIN(Triangulated Irregular Network)を地表面に当てはめて内挿補間し、等間隔の格子状の数値標高モデルを作ります。
(4)正射変換とモザイク。 数値標高モデルと外部標定要素を使い、写真上の位置と地上の場所の関係を三角関数で求めて正しい位置へ移します。1枚ごとに作られた正射画像を、つなぎ目が目立たないように接合(モザイク)し、30秒×30秒の経緯度区画に分割してデータファイルにします。
写真の座標は、RTKと同じ仕組みで決まっている
(3)で出てきた外部標定要素の精度が、どう担保されているか。説明はこうです。
航空カメラにはGNSS/IMU装置(GNSS受信機と慣性計測装置)が付属し、撮影時のカメラの位置と姿勢を記録します。ただし受信した測位信号には、電離層や対流圏を通過する際の誤差や受信機の時計の誤差が含まれています。そこで電子基準点などの地上に設置された基準点上で同時に観測されたデータと、航空機上のデータを組み合わせて処理するキネマティック解析を行い、これらの誤差を軽減して高精度な外部標定要素を求めています。

地上の基準点と、動いている受信機の同時観測を組み合わせて誤差を打ち消す——移動局が航空機になっただけで、現場のRTKと同じ構図です。電離層・対流圏・受信機時計という誤差の並びも、RTKで日々相手にしているものと同じです。空から撮った写真が地図に重なるのは、その仕組みが効いているからだと言えます。
現場での使いどころと、確かめ方
- 土地の履歴を調べる。造成前の地形、旧河道の跡、埋立前の水際。地形分類のレイヤと重ねると、分類の根拠が目で見える
- 構造物の設置年を絞る。年代帯をまたいで同じ場所を見れば、ある構造物がいつの間に現れたかが分かる
- 基準点の周囲の変化を見る。古い成果の基準点が「いまも同じ環境にあるか」の手がかりになる
注意しておきたいのは、重ね合わせの一致度を自分で確かめることです。古い年代の写真は、標定点の条件も、正射変換に使える標高データの前提も、現在のものとは違います。重なり具合は場所によって差が出るので、動かない目印——道路の交差点や橋の位置など——を1つ決めて、現在の地図と見比べてから読むのが安全です。写真に写っている位置をそのまま座標として引くのではなく、座標は座標の資料から取る、という順序を崩さないことです。
まとめ
- 空中写真は中心投影なので、1枚のままでは座標が付いていない。地面から高いほど、写真の縁に近いほど像がずれる
- 地理院地図の年代別の写真は 1928年頃/1936〜1942年頃/1945〜1950/1961〜1969/1974〜1978/1979〜1983/1984〜1986/1987〜1990 の8帯+年度別写真(2007年以降)
- 1945年前後の写真には米軍が撮影したものが含まれ、すべて「地図・空中写真閲覧サービス」で閲覧できる。保管は1930年代から現在まで
- 撮影の対象は国土や地域の管理上重要な平野部及び離島で、全国土の約半分
- オルソ画像は、撮影 → 標定点の設置 → 同時調整+数値標高モデル作成 → 正射変換とモザイクの4工程で作られ、30秒×30秒の経緯度区画で配られる
- 標定点は、構造物の角・道路の縁石・マンホール・白線などをGNSS測量機で現地計測して与えることがある
- 写真の外部標定要素は、電子基準点など地上の基準点との同時観測を使ったキネマティック解析で精度を上げている。現場のRTKと同じ構図
- 時系列表示はズームレベル14以上、単写真はズームレベル15〜18
出典
- 国土地理院「空中写真」(保管年代・米軍撮影分・撮影範囲・GNSS/IMU装置とキネマティック解析) https://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa41006.html
- 国土地理院「オルソ画像について」(中心投影の位置ずれ・正射変換・4工程・30秒区画) https://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa40002.html
- 国土地理院「年代別の写真|地理院地図の使い方」(年代帯の一覧・時系列表示と単写真の表示ズーム) https://maps.gsi.go.jp/help/intro/looklist/2-nendai.html
- 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」 https://www.gsi.go.jp/MAP/maps_photo.html
本記事の年代区分と仕様は2026年10月時点の公開内容に基づきます。提供範囲や区分は更新されることがあるため、最新の状況は出典ページでご確認ください。
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- 書籍でまとめて学ぶ: 『日本の測地系Q&A』第11章「cm級測位の現場」(Kindle Unlimited対応)
開発者より: アプリ・Kindle本・公開プロジェクトの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
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