目次
概要
日本の測地系は、地震による地殻変動に対応するため、定期的に更新されています。本記事では、2011年に導入されたJGD2011(日本測地系2011)と、2024年に導入されたJGD2024(日本測地系2024)の違いについて解説します。
また、GeoDiveExaアプリケーションがジオイド2024をサポートしており、RTK-GNSS測定データがJGD2024と同等の精度を実現していることを説明します。
以後の説明の為にA1,A2を定義します
- A1:JGD2000からJGD2011までの地震地殻変動
- A2:JGD2011からJGD2024までの地震地殻変動
JGD2011とJGD2024の違い
1. 基準となる測地系
JGD2011(日本測地系2011)
- 導入年: 2011年10月21日
- 準拠楕円体: GRS80楕円体
- 基準エポック: 2011.0(2011年1月1日)
- ジオイドモデル: 日本のジオイド2011(GSIGEO2011)
- 対応地震: 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震までの地殻変動を反映(A1)
JGD2024(日本測地系2024)
- 導入年: 2024年5月23日
- 準拠楕円体: GRS80楕円体(JGD2011と同じ)
- 基準エポック: 2024.0(2024年1月1日)
- ジオイドモデル: 日本のジオイド2024(GSIGEO2024)
- 対応地震: 2024年までの主要な地震による地殻変動を反映(A2)
2. 主な更新内容
地殻変動の反映:確認中
JGD2024は、JGD2011導入後に発生した以下の地震による地殻変動(A2)と日々のプレート移動による影響を反映しています:
- 2016年熊本地震(M7.3)
- 2018年北海道胆振東部地震(M6.7)
- 2021年福島県沖地震(M7.4)
- 2022年福島県沖地震(M7.4)
- その他の中規模地震による累積変動
ジオイドモデルの高精度化
- GSIGEO2024: 最新の重力データと衛星測位データを使用
- 精度向上: 特に山間部や沿岸部でのジオイド高精度が向上
- メッシュ解像度: より細かいメッシュで地形に対応
3. 座標変換の必要性:確認中
JGD2011からJGD2024への変換では、以下の地域で大きな座標変動があります:
- 東北地方: 東北地方太平洋沖地震後の余効変動(最大数十cm)
- 熊本周辺: 2016年熊本地震の影響(最大数十cm)
- 北海道胆振地方: 2018年地震の影響(最大数十cm)
- 福島県沖: 2021-2022年の地震の影響(最大数十cm)
比較表
測地系仕様比較
| 項目 | JGD2011 | JGD2024 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 日本測地系2011 | 日本測地系2024 |
| 英語名 | Japanese Geodetic Datum 2011 | Japanese Geodetic Datum 2024 |
| 導入日 | 2011年10月21日 | 2024年5月23日 |
| 準拠楕円体 | GRS80 | GRS80 |
| 長半径(a) | 6,378,137 m | 6,378,137 m |
| 扁平率(1/f) | 298.257222101 | 298.257222101 |
| 基準エポック | 2011.0 | 2024.0 |
| ジオイドモデル | GSIGEO2011 | GSIGEO2024 |
地殻変動対応比較:確認中
| 項目 | JGD2011 | JGD2024 |
|---|---|---|
| 対応期間 | ~2011年3月 | ~2024年1月 |
| 主要地震数 | 2003年からの12地震 | 2011年からの16地震以上 |
| 最大変動量 | 約5.3m(東北地方) | 約5.5m(東北地方累積) |
| 補正メッシュ数 | 約217,891メッシュ | 約250,000メッシュ以上 |
ジオイドモデル比較
| 項目 | GSIGEO2011 | GSIGEO2024 |
|---|---|---|
| 精度(標準偏差) | ±3cm程度 | ±2cm程度 |
| メッシュ間隔 | 1km(3次メッシュ) | 1km(3次メッシュ) |
| 山間部精度 | ±5cm程度 | ±3cm程度 |
| 沿岸部精度 | ±4cm程度 | ±2.5cm程度 |
| 重力データ数 | 約200万点 | 約220万点以上 |
GeoDiveExaのJGD2024対応
ジオイド2024のサポート
GeoDiveExaアプリケーションは、ジオイド2024(GSIGEO2024)をサポートしており、RTK-GNSS測定データにおいて標高はJGD2024と同等の精度を実現しています。
RTK-GNSS測定とJGD2024
RTK-GNSSの特徴
- リアルタイム測位: 基準局からの補正情報を使用
- 高精度: 水平方向±2cm、垂直方向±10cm程度
- 楕円体高: WGS84楕円体に基づく高さを測定
ジオイド2024による標高変換
GeoDiveExaでは、RTK-GNSSで取得した楕円体高を、ジオイド2024を使用して標高(東京湾平均海面からの高さ)に変換します:
標高 = 楕円体高 - ジオイド高(GSIGEO2024)
この変換により、以下が実現されます:
- JGD2024準拠の標高: 国土地理院の最新基準に準拠
- 高精度な標高: ±10cm程度の精度
実用上のメリット
1. 高精度な標高取得
従来の簡易ジオイド: ±10-20cm程度の誤差
↓
ジオイド2024使用: ±2-3cm程度の誤差
山間部や沿岸部でも高精度な標高が得られます。
2. 標高比較取得
ジオイドモデルととして2011と2024をサポートしているので、状況に応じて切り替えて使えます。また測定結果にはジオイド2011,2024の2つを付加しているので比較も出来ます。
参照:ジオイド2024 日本とその周辺の変更点(3)
3. 将来の測地系更新への対応
ジオイドモデルを更新することで、将来の測地系変更にも柔軟に対応できます。
技術的な実装
GeoDiveExaの座標変換フロー
RTK-GNSS測定
↓
WGS84座標(楕円体高を含む)
↓
┌─────────────────────┐
│ WGS84 → JGD2011変換 │ ← RTK補正ずみなので殆ど同じ
└─────────────────────┘
↓
┌─────────────────────┐
│ 楕円体高 → 標高変換 │ ← ジオイド2024使用
└─────────────────────┘
↓
JGD2011相当の座標(緯度、経度)とジオイド2024の標高
まとめ
JGD2011とJGD2024の関係
- 楕円体は同一: GRS80楕円体を共用
- 地殻変動の違い: JGD2024は2024年までの地震とプレート移動の影響をを反映:確認中
- ジオイドの高精度化: GSIGEO2024で精度向上
GeoDiveExaの現状
GeoDiveExaは以下の点で、JGD2024に対応しています:
- ジオイド2024サポート: GSIGEO2024による高精度標高
JGD2011+ジオイド2024対応なのでJGD2024と言える:確認中 - みちびきのCRAS受信機使用時: セミダイナミック補正によりJGD2024のリアルタイム高精度測位
実務上の意義
- 公共測量について: JGD2024準拠の成果作成が可能と思われますが、国土地理院の認証が取れていませんので、公共測量には使用できません。
- 高精度測定: ±2cm精度の測定実現
- 国土地理院整合: 電子基準点、基盤地図情報との整合
GeoDiveExaを使用することで、最新の測地系JGD2024に準拠し測定データを、現場でリアルタイムに取得できますが公共測量には使用できません。
注意1:公共測量には使えません
GeoDiveExaはこの記事の様に、国土地理院の補正パラメータにより高精度の位置を計測するアプリですが、その結果を何ら保証する物ではありません。また国土地理院の認証が有りませんので、公共測量には使用できません。あくまでも地物を測定する支援アプリケーションです。
注意2:セミダイナミック補正
GeoDiveExaはみちびき(CLAS)受信結果にセミダイナミック補正を適用して元期座標にすると国土地理院のJGD2024座標相当になります。
参考資料
国土地理院公式資料
技術仕様書
- 測量法施行令(2024年改正)
- 測量法施行規則(JGD2024対応)
- 公共測量作業規程の準則(JGD2024版)
執筆日: 2024年11月4日
バージョン: 1.0
対象: GeoDiveExa 開発者・利用者
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